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ワイピオに伝わる神話:神様が、美しい妻を殺した?!

ハワイでは、目に見えない神秘の力「マナ」が存在すると考えられています。
マナは誰にでもあるのですが、特に王様やチーフなど高位の人たちはたくさんのマナを持っていると言われました。
また、マナは人だけではなく、特別な場所、特別な石などに宿っているとも言われています。
王家の住まいや、ヘイアウと呼ばれる儀式を行う場所は、マナが宿る場所に建てられているのです。
今回は、昔からマナが満ちていると伝えられるハワイ島ワイピオ渓谷をご紹介します。

昔からハワイアンが住んでいた王家の谷

ワイピオ渓谷は、古くからハワイアンが住み着いた場所です。
水が豊富な川が流れていて、その水を利用して、ハワイアンの主食であるタロイモ畑がたくさん作られています。
土壌が豊かなので、果物や作物もよく育ちますし、海の幸にも恵まれています。
ワイピオには、昔から王を中心としたハワイアンのコミュニティが形成されていました。
今でも、王や高位のチーフの遺骨が、この谷のどこかに眠っているそうです。
美しく神秘的なワイピオ渓谷は、「王家の谷」と呼ばれています。

ワイピオ渓谷に伝わる神話

ワイピオ渓谷には、神話もたくさん伝えられています。
もっとも有名な神話のひとつが、豊穣の神ロノにまつわる話です。

ある時、ロノ神は、ワイピオに住む美しい娘と結婚しました。
幸せな結婚生活を送っていたのですが、ロノ神は、美しい妻がほかの男たちと浮気をしているのではないかと疑いの気持ちを持つようになりました。
そして妻が浮気をしていると思い込んで、ある時、妻を殺してしまいました。
ところがその後、ロノは我にかえると、自分の犯した間違いに気づきました。
取り返しのつかないことをしてしまったと悔やんだロノは、妻を称える祭りを行うことにしました。
それが、「マカヒキ」と呼ばれる祭りのはじまりだと伝えられています。

11月ごろから約3カ月間、農作業や戦いなど、食事の用意以外のすべての仕事を中止して、人々はゲームをしたりして過ごします。
ちょうど雨季にあたり、農作業には向かない時なんですね。
また、収穫祭の意味もあり、人々は王やチーフに年貢を納めました。

マナによって守られている渓谷

ワイピオ渓谷へは、シャトルバスや馬車で谷底を巡るツアーで行くことをおすすめします。
私が以前行ったときは、ワイピオの住民の方がガイドで、私有地内のタロイモ畑を案内してくださいました。
ほかにも、ククイ、ハラ、ノニ、グアバなどの植物や、大津波で建物が流され、玄関ポーチへと続く階段だけが残った家などを見ることができました。
昔のハワイの暮らしを実際に見ることができるので、とても勉強になります!

その時に、ガイドの方からこんなお話を伺いました。
1946年、アリューシャン列島で地震があり、ハワイは大津波に襲われました。
ワイピオ渓谷も津波の被害がありましたが、ひとりも死者が出なかったとか。
ワイピオに住む人々は、被害がなかったのは、この谷がマナによって守られているからだと思っているということです。
ハワイ島に行ったら、ぜひワイピオ渓谷でマナを感じてみてくださいね!

『ハワイの神話 モオレロ・カヒコ』2

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定期的に、「ハワイ神話講座」を開講しています。